執筆講演

執筆講演 - 建築コラム

高温多湿の住まい「水の日本に暮らす」

友人、坂田昇一君から借りたFRONT(1999.7 発行)を読んでの感想を述べる。

家の作りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる・・・・。

徒然草の文章だ。古来、日本では、湿気の多い夏を基準とした家づくりがなされてきたが、快適さの追求と文明の利器の発達により、戦後、住まいの造りようは大きく変わる。かつての家屋と現代家屋を比べながら、日本の風土や気候に合った住まいとは何か、暮らしの在り方とは何かをあらためて考え直そう。そういう内容であった。

自然に逆らわず、自然を受け入れ、その中で共生しながら人間の暮らしを守れる家を創る、良くしよう、というのが従来の日本家屋であった。建築設計に携わる者として、私が学生時代から持ち続けていた内容に近かった。共感した!最近は多くの建築設計者が現在の地球環境の状況から環境にやさしい建築を・・・と語っているが、昔からあたりまえの内容で誰もが理解できるいたって簡単なことだと思う。

孔子は2500年前に述べている。私は論語(孔子)を生涯の師としている。論語読みの論語知らずの類ではあるが、気持ちだけは持ち続けている。実践できるものから行う。建築に限らず、現在の地球環境問題の解決を探る基本は「論語」にあるといっても過言ではない。しかし実践となるとむずかしい。

子曰、君子食無求飽、居無求安、敏於事而愼於言、就有道而正焉、可謂好學也已矣

・子曰わく、君子は食飽かんことを求むること無く、居安からんことを求むること無し。
 事に敏にして言に慎み、有道に就きて正す。学を好むと謂うべきのみ。
・先生がいわれた、君子は腹いっぱいに食べることを求めず、安楽な家に住むことを求めない。
 仕事によくつとめて、ことばを慎重にし、しかもなお道義を身に付けた人に就いて
 善し悪しを正してもらうというようであれば、学を好むといえるだろう。

孔子の言うように、地球環境を悪くしない方法は消費を少なくすればよいのであるから必要のない建物は造らない、造った建物は壊さない。より長く使う。長く持つように造る。維持のための修繕意外は極力しない。用途変更、改修する場合にも最善の方法、材料を使う。天然素材を適材適所に使用する。化学物質は極力使用しない。しかし現況はどうであろうか?

最近の日本における住宅の建築戸数は年間110〜130万戸を数え、しかも20〜30年サイクルで新築する。増築、改装を含めるとさらに増えかなりの消費量となる。再考まさに必要な時である。最近、100年住宅などと言われはじめたが税制も含め全く考えられていないではないか。もともと日本の家屋はそれ以上受け継がれてきたではないか。100年、200年前に建てられた素晴らしい建物は、一部を除いてほとんど姿を消している。アメリカなどのツーバイフォー住宅でさえ50年、60年使用しているではないか。日本で言う10年保証などあたりまえではないか!

本の内容は、実践方法論などを一部紹介しているが、建物が呼吸していること、地域により智慧を出して、造り方に工夫を凝らしていること、300年もつ家づくりの技の紹介もしている。現況はまだまだ反対の方向に進んでいると思えるが学ぶべきは天然である。現代社会の風潮に流されがちな人間にとっての住まい方、生き方をあらためて問い直す本であった。他人に惑わされず、自身のライフスタイルを確立し進もうではないか!

和して同ぜず、同じて和せず。